生レバーはなぜ提供禁止になったのか？過去からの変化と業者の声

2025年1月17日2025年2月12日

あの舌触りと風味はもう味わえない？生レバー提供禁止の真相に迫る

「レバ刺し」として多くの人に愛されてきた生レバー。あの独特の風味と舌触りを懐かしむ人も少なくないでしょう。しかし、現在では生レバーの提供は法律で禁止されています。なぜ、これほどまでに人気だった生レバーは姿を消してしまったのでしょうか？

この記事では、生レバー提供禁止の背景、禁止前後の変化、そして提供業者の声を通して、生レバーの現状を深く掘り下げていきます。

1. 【なぜ】生レバーは提供禁止になったのか？食中毒リスクと法規制の背景

生レバーの提供が禁止された最大の理由は、食中毒のリスクです。特に牛のレバーには、腸管出血性大腸菌（O157など）やカンピロバクターといった細菌が存在する可能性があり、これらの細菌は加熱不十分な状態で摂取すると、重篤な食中毒を引き起こすことがあります。

厚生労働省は、2012年7月から食品衛生法に基づき、牛レバーを生食用として販売・提供することを禁止しました。

2012年7月1日以降、牛の肝臓（レバー）を生食用として販売・提供することは禁止されています。

出典：厚生労働省牛レバーを生で食べること

この措置が取られた直接的なきっかけは、2011年に発生した焼肉店での集団食中毒事件です。この事件では、複数の客が牛の生レバーを食べた後にO157に感染し、重症者や死者が出るという悲惨な事態となりました。事件後、厚生労働省は専門家会議を設置し、牛レバーの生食によるリスク評価を改めて行いました。その結果、従来の衛生管理方法では生レバーの安全性を確保することが困難であると判断され、食品衛生法に基づく規制が導入されることになったのです。

牛レバーの内部に存在する細菌は、表面を殺菌するだけでは完全には除去できません。また、レバーの構造上、加熱しても均一に火を通すことが難しく、内部に生の部分が残ってしまう可能性があります。これらの理由から、生レバーは非常に高い食中毒リスクを伴う食品と見なされ、一般消費者への提供が禁止されるに至りました。

2. 【過去との比較】生レバー提供禁止前後の変化：レバ刺しから加熱調理へ

生レバーの提供が禁止される以前は、多くの飲食店で「レバ刺し」として親しまれていました。独特の風味と食感が人気を集め、特に焼肉店や居酒屋では定番メニューの一つとして広く提供されていました。しかし、食中毒のリスクは以前から認識されており、提供業者も一定の注意を払っていましたが、完全な安全性を確保することは困難でした。

提供禁止後、飲食店では牛レバーの生食メニューは姿を消し、代わりに加熱調理されたレバー料理が提供されるようになりました。また、一部の飲食店では、豚や鶏のレバーを加熱調理して提供したり、馬レバーを生食用として提供したりするケースも見られます。ただし、豚レバーも2015年6月からは生食が禁止されており、鶏レバーについても加熱調理が推奨されています。

消費者にとっては、生レバーを食べられなくなったことは残念ですが、食中毒のリスクを回避できるという点で、安全性が向上したと言えます。また、提供禁止を機に、レバーの加熱調理方法や新しいレバー料理の開発が進み、食の安全に対する意識も高まりました。

3. 【当事者の言い分】生レバー提供業者の声：苦悩と模索

生レバーの提供禁止は、飲食店や食肉業者に大きな影響を与えました。特に、生レバーを看板メニューとしていた飲食店では、客足が減少し、経営に大きな打撃を受けたケースも少なくありません。

提供業者からは、「安全な生レバーを提供するために、独自の衛生管理システムを導入していた」「長年の経験から、安全なレバーを見極めることができる」といった声も聞かれました。しかし、厚生労働省は、これらの自主的な取り組みだけでは食中毒のリスクを完全に排除できないと判断し、一律の提供禁止措置を維持しています。

また、一部の業者からは、「生レバーの提供を全面的に禁止するのではなく、厳しい基準をクリアした業者に限定して提供を許可するべきだ」という意見も出ています。しかし、現状では、そのような限定的な提供を可能にするための明確な基準や管理体制が確立されておらず、安全性の確保が難しい状況です。

生レバーの提供禁止は、食の安全を守るための重要な措置である一方、関係業者にとっては厳しい現実となっています。今後は、加熱調理されたレバー料理の普及や、新たなレバーの活用方法の開発を通じて、消費者のニーズに応えていくことが求められます。